初めてがん患者さんを担当した思い出

患者さんとの思い出と看護師のお仕事

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このサイトについて長年看護師として勤めた経験と思い出を離職した機会に徒然に書いてみました。
これから看護師を目指す人の参考になればいいなと思っています。

がん治療の患者さんとの思い出

私が看護師として勤務していた30年余りの間にいろいろな患者さんを見てきました。
その中には、がん患者さんも多くいらっしゃいました。今でこそ、手術や化学療法などで完治するようになりましたが、以前は不治の病として、医師は家族には伝えるけれども本人には告知しないという時代もありました。
そのイメージが強いのか、自分ががんと知った患者さんは一様にみな落ち込むのがわかるのです。そこから引き上げて、明るく元気に治療に向かわせるのも看護師のお仕事です。
がん治療の患者さんとの思い出

初めて担当したがん患者さん

看護師として、初めて私が担当したがん患者さんは60歳の男性でした。
その男性は、当初、路線バスに接触して転倒するという交通事故で病院に運ばれてきたのでしたが、全身を検査しているうちに大腸にがんがあるのが見つかりました。早速、医師は、この患者さんの長男に病状を説明して、手術を受けるように説得を依頼しました。大腸がんはすでに大きく広がっているため、患部の大腸を摘出して人工肛門を腰のところに新設する大手術となります。
しかし、長男さんは「父は頑固もので、2年前に母を亡くしていてからそれが顕著になりました。今、一人暮らしをしていて、我が家で同居を勧めてもまったく同意してくれません。そんな頑固ものの父に理由も説明せずにそのような大手術を受けさせるのはちょっと厳しいですね。」というのでした。

患者さんとお孫さん

まだ、インフォームドコンセントという言葉が一般に知られる前の時代ですから、がんを告知することを患者が望むも望まないもない状況で、一方的に告知するのは酷な話でありました。
だからといって、何の説明もせずに手術をするのは乱暴な話です。
そこで医師は長男さん立合いのもと、腸内に大きな潰瘍が出来ていて摘出する以外に選択肢がない旨を伝えました。今ならそれが、がんだと容易に察することができる言い回しですが、ご本人は気づかずに(気づいていたのかもしれませんが)ちょっと考えさせてほしいと言って、病室に戻りました。病室への移動を介護した私は、病室に小さな女の子がいるのに気付きました。「おじいちゃん、大丈夫?」と聞く女の子に、患者さんは今まで見たことのない満面の笑みで「大丈夫だよ」と答えました。
「運動会に来れる?」という問いには、ちょっと表情を曇らせ「どうかなぁ」と答えたのでした。

看護師の役割

「お孫さんですか?」と聞く私に「ああ、○○ちゃんといって、今年小学校に入ったばかりだ」と患者さん。
「それじゃあ、早く元気になって、○○ちゃんの運動会を見に行かなきゃね」
「いやあ、来週の話だからちょっと無理だなぁ」
「でも、来年の運動会には行けるでしょ?しっかり治して○○ちゃんの応援に行かなきゃ」
「うーん。。。そうだね」

その後、この患者さんは大腸がんの手術を受けて、人工肛門を使うリハビリをしてから1か月後に退院をしました。奥さんを亡くされて長い間落ち込んでいたところを、今回の入院でお孫さんの笑顔に励まされて元気を取り戻したようです。
患者さんを励ますのは看護師のお仕事ですが、落ち込んでいる患者さんの家族がいれば、家族を励ますのも看護師のお仕事です。最終的には家族の励ましが患者さんの病気と闘う原動力になるのですから。

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がん治療の患者さんとの思い出
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私が看護師として勤務していた30年余りの間にいろいろな患者さんを担当しましたが、がん患者さんも多くいらっしゃいました。
今でこそ、手術や化学療法などで完治するようになりましたが、以前は不治の病として、医師は家族には伝えるけれども本人には告知しないという時代もありました。私が初めて担当したがん患者さんのことは今でもよく覚えています。病名は知らされていなくても察するものがあるのでしょう。気分が沈みがちの患者さんを、そこから引き上げて、明るく元気に治療に向かわせるのも看護師のお仕事です。がん治療の患者さんとの思い出の続きはコチラ

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